- 企業法務
- 2026.05.20
有給休暇の年5日取得義務とは? 対象者・計算方法・罰則をわかりやすく解説
目次
有給休暇の年5日取得義務とは
2019年4月の労働基準法改正により、使用者は年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、そのうち5日については、基準日から1年以内に時季を指定して取得させることが義務付けられました。
この制度は、低調な年次有給休暇の取得率を改善し、労働者の心身のリフレッシュを図ることを目的としています。
使用者は労働者の意見を聴取し、その希望を尊重するよう努める必要がありますが、労働者が自ら取得した分や計画的付与分は5日の義務から控除されます。義務に違反した場合には、労働者1人につき30万円以下の罰金が科される可能性があります。
有給休暇5日取得義務の対象者と条件
有給休暇の年5日取得義務は、すべての従業員に一律で適用されるわけではありません。「年10日以上の有給休暇が付与される労働者」が対象になります。
有給5日を取れなかったらどうなる?企業側に罰則はある?
有給休暇の年5日取得義務は、法律で会社に確実に従業員に取得させる責任が課されています。年5日の取得義務に違反した場合は、30万円以下の罰金の対象となる可能性があります。なお、1人の労働者に対する違反ごとにこの罰則が成立するため、対象社員が複数いる場合は合計で高額になるケースもあります。
会社は有給取得を強制できる?
有給休暇は本来、労働者が希望する日に取得する「権利」です。しかし、2019年の法改正により、一定の条件のもとで会社が取得日を指定することが認められる制度が導入されました。
そのため、「会社が有給取得を強制できるのか?」という疑問に対しては、原則として有給休暇は労働者の請求によって取得するものですが、年5日については会社に時季指定義務がある、というのが正しい理解になります。
時季指定義務とは
年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、会社は毎年5日について、時季(取得日)を指定して取得させる義務があります(労働基準法第39条第7項)。
これは、従業員が自発的に5日以上取得していない場合に、会社が日程を決めてでも取得させなければならないという制度です。
ただし、完全に一方的に決めてよいわけではなく、
- できる限り労働者の意見を聴く
- 労働者の希望を尊重する
ことが求められています。
すでに労働者が5日以上取得している場合には、会社が改めて指定する必要はありません。
労働者が拒否できるケース
会社が時季指定義務により指定した時季について、会社が、労働者に対し、意見聴取の手続を再度行い、その意見を尊重することによって変更することは可能です。
また、会社が指定した時季について、労働者が一方的に変更することはできないものの、会社が指定した後に労働者に変更の希望があれば、会社は再度意見を聴取し、その意見を尊重することが望ましいとされています。
なお、すでに5日以上の有給を取得している労働者に対して、追加で時季指定を行うことはできません。
有給休暇は本来「労働者の権利」であるため、会社の一方的な強制にならないよう、適切な説明と調整を行うことが重要です。
企業が取るべき対応
有給休暇の年5日取得義務は、「制度を知っているだけ」では足りません。実際に違反を防ぐためには、取得状況の管理体制を整え、就業規則を見直し、運用ルールを明確にすることが重要です。
取得状況の管理方法
まず重要なのは、誰が対象者なのかを正確に把握することです。
具体的には、
- 年10日以上の有給が付与されている従業員の特定
- 各従業員の「付与日」を起点とした管理
- 取得日数のリアルタイム把握
が必要になります。
特に注意すべきなのは、付与日が従業員ごとに異なる場合です。会社の年度や暦年ではなく、「付与日から1年以内」に5日取得させる必要があるため、個別管理が基本となります。
勤怠管理システムを活用する方法も有効ですが、システム任せにせず、定期的に未取得者をチェックする仕組みを整えておくことが重要です。
就業規則の整備
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成・届出義務があります。有給休暇の年5日取得義務に対応するためには、時季指定に関する規定を就業規則に明記しておくことが必要です。
具体的には、
- 会社が時季指定を行う場合があること
- 取得管理の方法
- 計画年休制度を導入する場合の内容
などを明文化しておくことが望ましいです。
就業規則に規定がないまま運用すると、労働基準監督署から是正を求められる可能性があります。
トラブルを防ぐためのポイント
有給取得義務は、制度そのものよりも「運用の仕方」でトラブルが発生しやすい分野です。以下の点に注意することが重要です。
- 従業員への事前説明を行う
時季指定を行う場合は、突然一方的に通知するのではなく、事前に説明し、できる限り希望を尊重する姿勢が必要です。 - 取得計画を早めに共有する
年度初めに取得予定を確認しておくことで、年末に慌てて指定する事態を防げます。 - 未取得者を放置しない
年度終盤になっても取得が進んでいない場合は、早めに時季指定を検討することが重要です。 - 形式だけの取得にしない
実際には出勤しているにもかかわらず「有給扱い」にするなどの不適切な運用は違法となる可能性があります。
有給休暇の年5日取得義務は、適切に管理すれば難しい制度ではありません。しかし、管理体制が曖昧なままでは、知らないうちに法違反となるリスクがあります。
企業としては、制度理解にとどまらず、管理・規程・運用の三つを整備することが、違反を防ぐための実務上のポイントとなります。
弁護士に依頼するメリット
有給休暇の年5日取得義務は、一見すると単純なルールに見えますが、実際には「対象者の判断」「付与日の管理」「時季指定の方法」「就業規則との整合性」など、法的な判断が必要となる場面が少なくありません。
① 法令違反リスクを未然に防げる
有給5日取得義務は労働基準法に基づく明確な法的義務であり、違反すれば罰則の対象となる可能性があります。
弁護士に相談することで、
- 対象者の判断が正しいか
- 付与日の設定が適法か
- 時季指定の運用に問題がないか
- 就業規則の規定が法令に適合しているか
といった点を事前にチェックできます。
② 就業規則・社内規程を適法に整備できる
有給取得義務への対応は、就業規則との整合性が重要です。
特に、
- 時季指定の規定
- 計画年休制度の導入
- 時間単位年休の取り扱い
- 管理方法の明文化
などは、条項の書き方によっては無効となる可能性もあります。
弁護士に依頼することで、形式だけでなく、実際の運用に耐えうる規程整備が可能になります。
③ 労基署対応・トラブル時のサポートを受けられる
万が一、労働基準監督署から調査や是正指導を受けた場合、企業単独で対応するのは不安が大きいものです。
弁護士に依頼していれば、
- 是正報告書の作成支援
- 監督署との対応方針の整理
- 従業員との紛争対応
などについて、法的観点からのサポートを受けられます。
また、有給取得義務違反が他の労務問題(未払い残業代など)に発展するケースもあるため、包括的な労務リスク管理の観点からも専門家の関与は有効です。
④ 経営判断のリスクを軽減できる
有給休暇の運用は、単なる人事労務の問題にとどまらず、企業の信用や採用活動にも影響を与えます。
弁護士に相談することで、
- リスクの大きさを客観的に把握できる
- 経営としてどこまで対応すべきか判断できる
- 将来的な紛争コストを抑えられる
といったメリットがあります。
有給休暇の年5日取得義務は、正しく運用すれば大きな問題にはなりません。しかし、管理が不十分なまま放置すれば、罰則や紛争リスクにつながる可能性があります。
制度対応に不安がある場合は、早い段階で専門家にご相談ください。
まとめ
有給休暇の年5日取得義務は、法定で年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、会社が確実に取得させなければならない制度です。
正社員だけでなく、条件を満たすパート・アルバイトや管理職も対象となる場合があり、付与日から1年以内に5日取得できているかを適切に管理する必要があります。
対応を誤ると、企業には是正指導や罰則のリスクが生じるおそれもあります。
有給休暇の運用に不安がある場合は、就業規則や社内ルールを見直し、必要に応じて専門家に相談しながら、法令に沿った体制を整えることが大切です。
有給休暇の取得義務への対応でお悩みの方は、藤沢にある弁護士法人KTG湘南藤沢法律事務所にご相談ください。