- 特集
- 2025.01.14
離婚に応じない配偶者への法律的解決策

離婚は、夫婦間の感情的な問題だけでなく、財産分与や親権、養育費など多岐にわたる課題が絡むため、しばしば協議が難航します。
特に、夫婦の一方が協議に応じない、もしくは不当な条件を提示してくる場合、協議による離婚が一層困難となる場合があります。
このコラムでは、配偶者が離婚協議に応じないなど離婚協議がうまく進まない場合に利用できる法律的な解決策を紹介します。
目次
1. 離婚の流れ(配偶者が離婚協議に応じない場合)
離婚は、夫婦双方の合意により成立する「協議上の離婚」と、夫婦の一方が離婚に同意しない場合にも成立する「裁判上の離婚」の二つに大別されます。
配偶者が離婚を拒絶する場合、以下のような流れで進むことが一般的です。
1-1 離婚協議の試み
「協議上の離婚」には、早期に離婚が成立することや離婚に関する条件について離婚調停や離婚訴訟の場合よりも柔軟な定めができる点などにメリットがあります。
そのため、配偶者が離婚に合意しない場合であっても、まずは話し合いによる協議離婚を試みるのが一般的です。もっとも、配偶者が離婚に同意しない場合には、離婚協議を打ち切り、裁判所を利用した手続きを検討する必要があります。
1-2 家庭裁判所での調停(調停離婚)
配偶者が離婚に同意しない場合、家庭裁判所に「離婚調停」を申し立てることができます。
離婚調停は、裁判官や調停委員が夫婦の間に入って双方の意見を聞きながら話し合いを進める手続きをいい、離婚に関する合意形成を目的とします。なお、離婚訴訟を提起するには、原則として、離婚調停を踏まなければなりません(家事事件手続法257条1項)。
・調停で合意できれば、調停成立となり、これで離婚が確定します(調停離婚)。
・調停で合意ができなければ、調停が不成立となり、離婚訴訟の提起を検討する必要がございます。
1-3 裁判(裁判離婚)
調停が成立しなかった場合、家庭裁判所に「離婚訴訟」を提起することができます。
離婚裁判では、法律に定められた離婚事由があるか否かが主な審理の内容となります。この法律に定められた離婚事由を「法定離婚事由」といいます。法定離婚事由にはどのようなものがあるのかについては、後述します。
裁判所は、法定離婚事由があると判断した場合、その夫婦は離婚するとの内容の判決を下します。
1-4 控訴・上告の可能性
判決が出た場合であっても、判決に不服な者は、一定期間内であれば控訴や上告が可能です。一定期間経過後、判決が確定し、離婚が成立します。
1-5 離婚届の届出
離婚を認める判決が確定した後は、判決が確定した日から10日以内に役所に離婚届けを提出します。
2. 離婚できる法的な条件とは
以下では、前述した法定離婚事由にどのようなものがあるのかについて説明します。
2-1 配偶者に不貞な行為があったとき(民法770条1項1号)
配偶者が不貞行為(浮気や不倫)を行った場合です。
配偶者の不貞が証明されれば、離婚を求める側が裁判で有利となり、配偶者が離婚に応じなくても裁判所が離婚を認める可能性が高まります。
証拠としては、配偶者のメールやSNS、写真などが利用されます。
2-2 配偶者から悪意で遺棄されたとき(民法770条1項2号)
悪意の遺棄とは、正当な理由なく配偶者としての扶養義務を果たさないことを指します。
具体的には、配偶者や子供を経済的・精神的に支援しない、家を出て行き連絡を絶つ、生活費を全く渡さないなどの行為等が該当します。このような状況が続く場合、裁判所は離婚を認めることがあります。
2-3 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき(民法770条1項3号)
配偶者が3年以上にわたって生死不明の状態にある場合、離婚を申し立てることが可能です。たとえば、事故や災害で行方不明になった場合、あるいは一方的に家を出て行き連絡が取れなくなった場合などがこれに該当します。この場合も、裁判所は離婚を認める傾向にあります。
2-4 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき(民法770条1項4号)
配偶者が回復の見込みがない強度の精神病にかかっている場合も、離婚の理由となります。ただし、人道的な配慮から、単に精神病を理由とするだけでは足りず、長期間にわたり看護や支援を行ってきたことが前提とされることが多いです。配偶者が精神病であることを理由に即座に離婚が認められるわけではなく、慎重に審理されます。
2-5 その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき(民法770条1項5号)
上記⑴~⑷以外の原因についても、夫婦関係が完全に破綻し、回復が不可能と判断される場合には離婚が認められることがあります。たとえば、長年にわたる不和や別居が続いており、婚姻関係が形骸化している場合などです。裁判所はこれを「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚の要件としています。
近年では、配偶者が離婚に応じない場合でも、別居期間が3年~5年以上になると「婚姻関係が事実上破綻している」とみなされ、離婚が認められるケースがあります。
3. 弁護士に離婚について相談するメリット
離婚交渉が難航し、配偶者が全く応じない場合でも、解決への道は閉ざされていません。もっとも、配偶者が離婚協議に応じない場合には、ご自身での解決に多大な労力と時間を要し、必ずしも離婚が成立するとは限りません。
そこで、弁護士に離婚について相談するメリットをご紹介します。
3-1 適切な方法選択及び方針転換の時期
前述のとおり、離婚には、協議離婚、調停離婚、 があり、それぞれメリットとデメリットがあります。具体的な事案によってどの方針を選択するかは、専門的な知見と経験が必要になります。また、離婚協議から調停へと方針を転換するタイミングの判断も難しく、同様に専門的な知見と経験が必要となります。
3-2 法定離婚事由の有無についての判断
法定離婚事由を説明しましたが、法定離婚事由の有無の判断は簡単ではありません。
また、法定離婚事由がある場合でも、裁判所は、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚請求を認めないことができます(民法770条2項)。裁判所が法定離婚事由を認めるのかについては、過去の裁判例等から判断していくことになります。
法定離婚事由に該当するかは弁護士に確認することをお勧めします。
3-3 負担を軽減しながら不利な条件で離婚をしてしまう可能性が低い
離婚は、夫婦間の感情的に対立することが多いため、離婚協議にかかる精神的な負担は大きいのが通常です。配偶者がDVやモラハラを行っている場合には、当事者による協議が不可能な場合もございます。
これらの場合には、配偶者とのやり取りを弁護士に依頼することで、依頼者様の精神的な負担を軽減できる点に大きなメリットがあります。
また、離婚には財産分与や親権、養育費など多岐にわたる課題が絡みます。そのため、検討するべき事項が多く、弁護士が関与しない場合には、不利な条件に合意してしまうリスクがあります。
4. 離婚問題に関するご相談は、相談実績が豊富な弁護士法人KTGに。
もし、離婚が思うように進まない、配偶者が拒否している、あるいは条件で合意できないといった問題を抱えている場合は、まずはお気軽にご相談ください。弁護士法人KTGに所属する離婚問題に関する知見・経験が豊富な弁護士が、徹底的にサポートいたします。
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