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法律コラム

相続・遺産分割を円満に行うための基本的なステップ

遺産分割は、亡くなられた方が遺した財産を、相続人の方々で分ける手続きです。遺言書に沿って行われたり、相続人同士での話合いによって行われたりします。

もっとも、遺言書に不備がある場合や、相続人同士の話合いが上手くいかない場合など、遺産分割においては争いが生じることが少なくありません。争いをできる限り避けるためには、問題になりやすいポイントを理解して冷静に対応することが重要です。

本コラムでは、遺産分割で問題になりやすい点やその回避方法などを解説していきます。

1. 相続時に問題となりやすいポイント

遺産分割を円滑に進めるためには、何をすればよいのでしょうか?まずは、遺産分割がどのような場合にトラブルになるかを知ることが重要です。

相続の際に起こるトラブルの多くは、相続人の間で意見が食い違うときに表面化します。

以下では、特に意見が分かれやすい点について詳しく解説します。

 

1-1 遺言書の有効性に関する問題

遺言書があれば、その内容どおりに遺産が分けられて、トラブルになることはないように思われます。しかしながら、実際にはそうならないこともあります。

まず、遺言書があったとしても、その遺言書が有効かどうかについて争われることがあります。

例えば、本当に本人が書いたものなのか疑いがある場合や、本人が書いていたとしてもその作成時点で認知能力等が十分でなかった場合などがこれにあたります。

 

1-2 遺言書の内容に関する問題

次に、遺言書の記載が不十分であるため、誰が何をどれだけ取得するのかわからないことがあります。内容が曖昧な場合には、その内容をどのように考えるべきかで意見が対立することもあります。

また、遺言書を書かれた時点から、実際に相続が発生した時点までの間に、財産の状況が変化していることもありえます。この場合に、変化した部分をどのように分割するかでも意見が分かれることが考えられます。

 

1-3 遺留分侵害に関する問題

遺言書のなかには、特定の方にのみ全財産を相続させたり、多くの財産が渡るように指定したりするものがありますが、相続人の一人一人には、遺言書によっても奪うことのできない最低限の遺産取得分が認められています。この遺産についての最低限の取得分を「遺留分(いりゅうぶん)」といいます。

そのため、遺言書にしたがうと、一部の方の遺留分が侵害されることがあります。このような場合には、遺留分が害されたと主張する相続人から、他の相続人に対して、自身の最低限の取り分を渡すように請求がされることがあります。これを遺留分侵害額請求と呼びます。

 

1-4 相続人の特定に関する問題

遺産分割は、相続人全員で行うことが原則となります。そのため、遺産分割を開始する前に、誰が相続人かを正確に把握する必要があります。

多数の兄弟姉妹の方が相続人に当たる場合や、一部の相続人が相続放棄をしている場合など、誰が相続人に当たるか判断することが難しいこともあります。また、亡くなられてから何年間も遺産分割が行われず、次々と相続が発生していることもあります。これらの場合に、相続人がわからず、いつまで経っても遺産分割を開始できないことがあります。

なお、近年では、再婚家庭や事実婚、養子縁組など家族関係が多様化していますが、これらの場合には、亡くなられた方の戸籍を取ってはじめて他の相続人が判明するということも考えられます。

 

1-5 遺産の特定に関する問題

遺産分割の対象は亡くなられた方が遺した財産ですが、必ずしも全ての相続人が全財産を把握しているわけではありません。このように各相続人が把握している情報に差がある場合もトラブルにつながるおそれがあります。

例えば、遺産の範囲を誤認しているため共有がされないことや、いわゆる財産隠し等が争いになるケースなどです。

なお、財産が判明している場合であっても、そのうちどの範囲を遺産分割の対象とするか争いになることもあります。

 

1-6 特別受益に関する問題

亡くなられた方が、一部の相続人に対して、多額の贈与や援助をしていた場合があります。このような場合に、贈与や援助の事実を無視して遺産分割を行うと、その方は贈与や援助に加えて遺産分割でも財産を取得できることになります。

一方で、援助や贈与によって遺産の全体が少なくなると、贈与や援助を受けていなかった相続人は、取得できる財産が減ってしまうことになります。

このような不公平が発生するため、一定の場合には、贈与や援助されたことを遺産分割においても考慮することがあります。このような贈与や援助のことを「特別受益」と呼びます。

ある贈与や援助があった場合に、それが特別受益に当たるのかについては、それぞれの利害が対立することになるため、争いになることがあります。

 

1-7 寄与分に関する問題

先ほどの特別受益とは逆に、一部の相続人の方が、亡くなられた方のご生前の財産形成に貢献していた場合があります。その相続人のおかげで遺産が増えているのであれば、その事実を考慮して遺産分割を行った方が公平といえる場合もあります。このような貢献部分を「寄与分」と呼びます。

寄与分が認められた場合には、貢献した相続人の取得分は増えますが、他の相続人の取得分は減ることになります。そのため、ある貢献等があった場合に、それが寄与分に当たるのかについても、各相続人の利害が対立することになるため、争いになることが多いポイントです。

 

1-8 遺産分割の方法に関する問題

遺産のうち、現金は分割できない事態がほとんど想定されないため、その分割の方法も問題になることはありません。

一方で、遺産に現金以外の資産が含まれる場合、これをどのように分割するか簡単には決められません。例えば、宝石などは、物理的に2つに分割することはほぼないといえるでしょう。

現金以外の資産のうち、争いになりやすいものとして不動産が挙げられます。不動産については、売却して現金化したうえで分割するか、一部の相続人が全て取得して他の相続人には補償額を支払う、といった形で調整する必要があります。

もっとも、そもそも売却に同意しない相続人がいる場合や、補償額の金額で争う場合などがあります。

 

1-9 相続税の負担に関する問題

高額な資産を相続する場合、相続税の負担が発生します。相続税の支払い方法や、どの相続人がどれだけ負担するかについても、トラブルの原因となることがあります。

特に、遺産が不動産などで占められており、現金が少ない場合には、相続税を捻出することが難しいことがあります。その結果、遺産分割が難航することも考えられます。

 

2. 相続を円満に終わらせるための終活

これまで相続の場面でトラブルになる主な原因を述べてきましたが、事前に対策をしておくことで避けられるケースも多くあります。

まずは、相続が発生する前にできることから確認していきましょう。

 

2-1 事前に家族と話し合う

遺言書の内容が一部の相続人に不公平感を与えるものである場合、それをきっかけに争いに発展することも考えられます。そのため、相続人が納得できるような内容にすることが肝心です。

内容を決めるにあたっては、家族全員とよく話し合い、それぞれの意向を共有することも有効です。家族が相続に関してどのように考えているか、誰が何を望んでいるのかを理解し合うことによって、後の誤解や不満を防ぐことができます。

多くのトラブルはコミュニケーション不足から生じますので、透明性を保ちながらの事前調整が重要といえます。

 

2-2 遺言書の作成を早めに行う

遺言は、亡くなられた方の最後の意思ともいえ、遺産を分ける場面でも尊重されます。そのため、相続を円満に終わらせるためにも、遺言書をしっかりと作成することはとても重要です。

ただし、上述したように、遺言書があったとしても、その有効性が争われることもないわけではありません。もっとも、現在では公正証書遺言という制度があります。

費用や手間はかかるものの、公正証書という形で遺言を残せば、その遺言書の有効性が争われる可能性を低くすることが可能です。

 

2-3 遺産の内容を整理し、明示する

被相続人が所有する財産について、相続人全員が正確な情報を持つことも重要です。

相続が始まると、相続人同士での情報の差がきっかけとなって争いに発展することもあります。そのため、財産を残す方ご自身が、事前に財産目録を作成するなどして、全ての相続人に共有しておくと良いでしょう。このようにしておけば、遺産についての不透明さや誤解を避けることができ、結果的に争いを回避する可能性が高まるといえます。

 

3. 相続発生後に遺産分割を円満に終わらせるには?

次に、相続が発生した後に考えるべきポイントを説明します。

相続は感情的な問題が背景にあることも多く、円満に終わらせるためには、コミュニケーションが非常に重要です。以下では、コミュニケーションとして具体的に何を検討すべきか解説いたします。

 

3-1 把握している遺産を共有する

相続においては、各相続人の把握している情報の差から争いに発展することも少なくありません。また、仮に遺産分割で協議がまとまったとしても、その後に新たな遺産が判明した場合には、その遺産について再度協議をしなければならず、紛争が蒸し返されてしまうこともあります。

これらの事態を避けるためには、各相続人が、他の相続人に対して、ご自身の把握している遺産を正確に共有することが重要です。

 

3-2 法定相続分にこだわらない柔軟な解決策を検討する

遺産の分配に関して、遺言書等で各相続人の取得分が指定されていない場合には、法律に定められた相続分で分割することもあります。これを法定相続分といいます。

もっとも、法定相続分があるとはいっても、それにこだわる必要はありません。相続人の皆様で合意が得られれば、法定相続分とは異なる形で遺産を分割することも可能です。相続人全員の合意を得ることで、納得感のある分割が実現しやすくなります。

 

3-3 感情を整理し、冷静な対話を心掛ける

最後に、相続は感情的な問題に発展しやすいものですが、冷静な対応が求められます。話合いが感情的にならないよう、冷静に進めることが大切です。時には専門家を交えた調停的な話し合いの場を設けることも、感情的な対立を回避するために有効です。

 

まとめ

相続を円滑に終わらせるためには、法的な知識だけでなく、家族の状況や感情に対する配慮が欠かせません。早めに手を打ち、関係者全員が納得できる形で準備を進めることが、円満な相続の秘訣です。また、相続人を特定することや遺産を正確に把握すること、遺言書を確認することや遺産分割協議など、ステップを一つ一つクリアに進めることも大切です。

しかし、どうしても話し合いがまとまらない場合や法的な手続きに不安がある場合は、ぜひ弁護士法人KTGにご相談ください。専門的な知識を活かし、相続人・相続財産の調査についてはもちろん、遺言書・遺産分割協議書の作成、他の相続人の方との交渉など、あなたの不安を解消する最善の方法を用いて、円滑な遺産分割の実現に向けて全力でサポートいたします。

この記事の監修者

弁護士 川口 哲志

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