- 特集
- 2025.03.07
交通事故の加害者が知っておくべき責任の種類

交通事故を起こし、相手に怪我をさせてしまった場合には、さまざまな種類の責任を負うことがあります。具体的には、民事責任・刑事責任・行政責任が挙げられますが、これらは別々に発生する責任であり、両立するものとなります。
そのため、それぞれの責任の存否や内容については、個別に判断する必要があります。
交通事故を起こしてしまった場合に、被害者とのトラブルを最小限に抑え、また、ご自身の負担を軽減するためには、これらの責任を十分に理解・把握して適切に対応することが重要です。
以下では、交通事故を起こしてしまった方が知っておくべき3つの責任について詳しくご説明します。
目次
1. 刑事責任
1-1 刑事事件とは
交通事故が発生した場合、加害者が刑事責任を問われることがあります。刑事責任とは、国が加害者に対して刑罰を科すものです。刑事責任を負うべきか否かは裁判により判断され、裁判所の判決に従って罰金の支払いなどの刑事処分が決定されます。
事故の原因が、加害者の故意(わざと)の場合だけではなく、過失(うっかり)である場合にも、刑法や道路交通法によって罰則が科される可能性があります。
1-2 交通事故の場合の刑事責任
刑事手続は、事故発生後に警察の捜査を経て進行しますが、必ずしも全ての交通事故に刑事責任が問われるわけではありません。また、捜査の結果、起訴される場合もあれば、不起訴となる場合もあります。
交通事故における刑事責任のうち、問題となることが多いものは以下の2つの罪です。
①過失運転致死傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)
運転操作の誤りやわき見運転といった不注意(=過失)によって人を死傷させた場合に適用されます。
②危険運転致死傷罪(同法第2条)
①の過失運転致死傷罪よりも悪質な事故やアルコールの影響を伴う事故について適用される場合があります。これに該当する場合は非常に重い刑罰が科されることもあります。
2. 民事責任
2-1 民事事件とは
加害者は民事責任を負う可能性もあります。民事責任とは、加害者が、被害者に対して、金銭的な賠償を行う責任のことです。
2-2 交通事故の場合の民事事件
交通事故によって怪我をしてしまった方は、怪我の治療費が掛かったり、仕事を休むことによって収入が減少したりするなど、さまざまな損害が発生することがあります。
損害の具体例としては、主に以下のものが挙げられます。
- 治療費:入院や通院、手術にかかる医療費
- 入通院(傷害)慰謝料:怪我や入通院をすることになった精神的苦痛
- 休業損害:仕事を休んだことによる収入の減少
- 車の修理費:事故によって車が故障・損傷した場合の修理費用 また、怪我の状況などによっては完治が困難であると診断され、いわゆる「後遺障害」の認定がされることもあります。この場合には、以下の損害も考えられます。
- 後遺障害慰謝料:後遺症が残った場合の精神的苦痛
- 後遺障害逸失利益:後遺症によって(十全に働けなくなることにより)減少する将来の収入
これらの損害はあくまで一例ですが、いずれにしても、民事責任における賠償は、被害者を事故前の生活に戻す(近づける)ための補償として支払われます。
2-3 民事事件の賠償
さて、これまで民事責任について述べてきましたが、現代の日本においては、車を運転される多くの方が、自賠責保険に加えて任意保険に加入されています。そのため、保険会社が補償を行うケースがほとんどであり、加害者自身がお金を支払わなければならないケースはそれほど多くはありません。
もっとも、保険でカバーしきれない部分については加害者自身が支払わなければなりません。対物保険に加入していない場合や、補償の上限額を超えた場合などがこれに当たります。
3. 行政責任
3-1 行政責任とは
交通事故を起こすと、刑事責任や民事責任だけでなく、行政処分も科される場合があります。行政処分は、国や公共団体が国民に対して行う処分であり、その趣旨や目的によって内容も様々ですが、交通事故では特に自動車運転免許との兼ね合いで問題となります。
3-2 免許制度
日本の免許は点数制度が採られており、事故や違反の内容に応じて違反点数が加算され、累積点数が一定に達すると免許停止や取消しといった処分が科されることになります。
- 免許の点数制度について
- 免許の点数制度は、違反や事故があるたびに点数が加算される仕組みで、累積点数によって運転免許の行政処分が決まります。 たとえば、軽い違反では1~2点が加算され、飲酒運転や重大な事故では6点以上が加算されることもあります。加算の累積が6点に達すると免許停止処分が科され、15点に達すると免許が取り消されてしまいます。さらに、過去に免許停止や取り消しの処分歴がある場合には、点数の累積基準がより厳しくなり、以前よりも重い処分が科されることとなります。そのため、特に処分歴がある方は点数制度に注意し、安全運転を心がけることが重要です。なお、違反や事故をせず3年間が経過すれば累積点数はリセットされるため、継続的に安全運転を心がけることで処分を避けることができます。
4. まとめ
事故が発生してしまった場合、これまで述べた各責任を適切に理解し、速やかに対応することが重要です。
事故発生後の対応としては、まず被害者の安全確保や救急通報、警察への報告などが求められます。また、保険会社への連絡や、自身の過失についての確認も重要です。
本稿で述べた刑事責任、民事責任、行政責任のそれぞれを理解し、適切に対処することが、事故後のトラブルを防ぐ上で重要です。事故を起こしてしまった場合は、迅速に対応し、真摯な態度で被害者への賠償や再発防止の取り組みを行うことが求められます。
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